まずは、市販の膣圧計で測っている「膣圧」と、セックスの時の「膣の締まり」とは異なる、その点をよく認識してください→こちら。

本当にあなたの膣はゆるいのか?ゆるいとしたら、それは中のほう(骨盤底筋)か、入口なのか?これを計測してみましょう。それがスタートです。

1 膣トレーニングとEMS

骨盤底体操(ケーゲル体操)とも呼ばれます。お尻の穴をキュッと締めるような動作を繰り返すもので、要するに膣周囲の筋トレです。

いちばん手軽でお金もかかりませんが、ほんとうに骨盤底筋や膣入口の括約筋を引き締める動作になっているか?という点では、疑問が残ります。

一方、EMS(Electrical muscle stimulation)というのは、筋肉を電気刺激して鍛える方法です。おなかにくっつけて腹筋をぴくぴくと鍛えたりするEMSの家庭用機械は良く知られていますが、この膣バージョンです。

EMS

外国製の膣用EMSの一例。銀色の電極のついた部分を膣内に入れて弱い電流を流して、周辺の筋肉をぴくぴくと鍛えます。

実際、最近の医学論文で、骨盤底体操を指導したグループと、EMSを使用したグループとで比較したところ、EMSのほうが膣圧の上昇が大きかったという報告もあります。(Effects of Electric Stimulation and Biofeedback for Pelvic Floor Muscle Exercise in Women with Vaginal Rejuvenation Women. J Korean Acad Nurs. 2015 Oct;45(5):713-22.

このようにEMS装置、有望ではあるのですが、もともとは尿失禁(尿もれ)などの対策のために作られたものであるので、セックスの際の括約筋を鍛える仕様とはなっていません。現在、日本のメーカーと協力して、セックスの際の膣の引締めに特化した製品を開発中です。ご期待ください。

2 ヒアルロン酸注射

豊膣注射、Gショット、Aショットなどと呼ばれるもので、膣壁にヒアルロン酸を注射して、女性の感度を高めます(→こちらに解説があります)。

膣にヒアルロン酸注射を打つと、その部分が膨隆するので、膣がペニスを柔らかいお布団でつつみこむような感じとなり、男性から「締りが良くなった」と評価されることが多いです。括約筋が強くなったわけではないのですが、軟部組織が増えて膣が狭くなったと感じます。

3 レーザーやラジオ波

最近では、膣内にレーザーやラジオ波を照射して、膣機能を改善する、という機械も出てきています。

しかし、今のところは、これらの施術をお勧めしてはいません。それはなぜかというと、これらはお顔の美容目的で照射するフラクショナルレーザーやラジオ波(RF)の機械のハンドピースを膣用に作り替えたものなのですが、お顔の皮膚で得られる非常に繊細な効果が膣壁に加わったくらいで、性機能を高めるほどの効果が得られるとは、どうしても考えにくいからです。

お口周りに、これらの機械を照射したと考えてください。お口の締りはよくなるでしょうか?お口周りの皮膚の張りやつやは良くなるかもしれませんが、締りが良くなるとまでは思えません。

お口の締りをよくしよう、お口を狭くしようと考えたら、口輪筋を鍛える口すぼめ体操(ペットボトルの口をくわえるなど)や、唇にヒアルロン酸を打ってぷっくりさせるほうが効果的だと思います。

医学論文を検索すると、こういった機械が産後の膣のゆるみに有効であったとの報告も確かにあります。(Radiofrequency treatment of vaginal laxity after vaginal delivery: nonsurgical vaginal tightening. J Sex Med. 2010 Sep;7(9):3088-95.)。

しかしそれをよく読むと、評価方法は、施術を受けた女性の膣のゆるみの自覚症状や、FSFI(Female Sexual Function Index、女性性機能指数)という問診票によっています。産後の女性の膣のゆるみは、何もしなくてもある程度は自然に改善していくものなので、この間に何かの施術を受けたからといってそれが効いたと判定すべきではありませんし、FSFIなどの問診票は、女性が性的なことを考える頻度などで点数が付きますので、偽の治療(プラセボとかsham therapyといいます)をして、その前後で評価すると数値は上がっていることが多いです(たとえば、J Sex Med. 2015 Feb;12(2):463-9.)。

お産をして、子育てが大変な時期にパートナーに求められて、乗り気ではないけど相手をしてあげたところ、セックスがうまくいかなくて、捨て台詞のように「お前の膣はゆるい」と言われた女性のショックは相当なものです。コンプレックスになってしまいます。そこをターゲットとする、「産後のあなたの膣はゆるんでいます。最新の〇〇という機械で膣を引き締めましょう!」というビジネスは成立します。

その施術を受けることで、自信がついてコンプレックスから解放される方もいるでしょうから、100%悪徳なビジネスとも言えませんが、あまりに高額な場合は問題でしょう。

少なくとも、1)産後の膣のゆるみは一年くらい経つと何もしなくても自然に回復する、ことや、2)膣トレーニングやEMS、ヒアルロン酸注射などの方法もある、ことに言及せずに、ただただ高額なレーザーやラジオ波の施術をすすめてくるようなクリニックやお医者さんは避けた方がいいですよ。