膣のゆるみというのは、女性の隠れたコンプレックスであることがあります。出産後、お風呂でお湯が入ってきたり、性交時にパートナーが昔のように元気になってくれないと、「わたしの膣がゆるいからかしら?」と気になります。

本当に私の膣はゆるいのか?これを客観的に判定するのが膣圧計測です。

市販の膣圧計。棒状のセンサーを挿入してお尻をしめるように力を入れて、そのときの圧の上昇具合を測ります。

と、ここまでの考え方はよいのですが、実はこの「膣圧計」の値、本当に性交時の膣の締まり具合を反映するのか?という根本的な疑問があります。
セックスの時に、皆さんお尻をキュッと締めるように、膣に力を入れていますか?そんなことはなく、むしろリラックスして、あるいは筋肉に力を入れている余裕などないはずです。

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市販の膣圧計で測っているのは、膣の中のほうの圧力です。これは骨盤底筋という、恥骨から尾てい骨につながる、腹部内臓を支えるテント状の筋肉の収縮力です。子宮脱や尿漏れに関係しています。

セックスのときの膣のしまりは、もっと膣口に近いところにある「球海綿体筋」(いわゆる「括約筋」)および、その周辺の脂肪などの非筋肉組織のボリュームによって作られます。

中のほうの収縮力ではなくて、入り口付近の狭さなのです。

ここからが本題です。この膣入口付近の狭さを、どう数値化するか?まずはそこから考えました。
呼吸不全のときに挿管に用いる気管内チューブには、容量20mlほどの柔らかいカフが付いています。これに空気を入れます。

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次にこの空気入れ口を、生体情報モニターの観血的血圧計センサーにつなぎます。これで、カフにかかる圧を連続記録する装置が出来上がりました。

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実際にカフを少し押してやると、敏感に圧を拾います。

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下は、実際にモニターの女性の膣にカフを挿入したときの圧記録です。まず膣入口を通過するときに、圧がぐっと上がります。これが膣入口の狭さを表していると考えられます。目盛りで31mmあります。このスケールは40mmが50mmHgにあたるので、膣入口圧は38.75mmHgと計算されます。

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次いで膣深部です。ここでの最低値は19mm(23.75mmHg)、ここで「お尻に力を入れて膣のあたりをぐっと引き締めて下さい」と声掛けします。このときの最大値が26mm(32.5mmHg)。32.5-23.75=8.75mmHg が、骨盤底筋の引き締めによる圧の上昇で、市販の膣圧計の示す値にほぼ等しいです。

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ついで力を抜いた状態で、カフを抜いていきます。このときの最大値は34mm(42.5mmHg)。入れるときと抜くときは若干入口の圧が異なり、どうも抜くときのほうがやや大きくなるようです。

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以上のA膣入口(in)、B膣深部、C深部引き締め、D膣入口(out)の4つの数字でもって、膣のスペックが記録できそうです。

評価としては、このモニターさんの場合、セックスの際の締まりに関しては、問題ありません。しかし、CとBの差は若干低めなので、骨盤底筋の収縮が弱いようです。運動はあまりなさらない方のようなので、年をとってからの尿漏れなどの予防のため、今から運動を心掛けるといいですね、というアドバイスになりました。

膣圧

10名の入口圧と深部引締め圧の値をプロットしたところ。入口圧が高くて深部引締め圧が低いひともいれば、入口圧、深部引締め圧ともに高いまたは低いひともいます。

この方法を用いれば、骨盤底筋の収縮力としての「膣圧」と、セックスの際の膣の締まりを反映すると考えられる「膣入口圧」とを別々に評価することができ、正しく患者さんを指導することが出来ます。このモニターさんに市販の膣圧計だけで測定して「あなたは膣圧が弱いですね」と伝えたら、この方は「私の膣は締りが悪いのか」と、誤解を与え、セックスに対する自信を失わせる結果となったかもしれませんね。

この方法による膣圧計測は、咲江レディスクリニックにて現在無料で行っています。ご希望の方はお申し出ください(ただし保険診療上の基本診察料は必要です)。