中間分子量ヒアルロン酸を主成分とした、お顔用の化粧水があります。これは分子量5万~11万という中くらいのサイズのヒアルロン酸を2%含有するものです。

なぜ、これは中高年女性の膣にいいかというと、膣粘膜の再生作用があると考えられるからです。すこし医学的な話になりますが、この分子量領域のヒアルロン酸はCD44というレセプターを介して上皮細胞の分裂増殖を促します。

わかりやすくマンガで解説しましょう。

ヒアルロン酸と言うのは、Nアセチルグルコサミンとグルクロン酸という二種類の糖の繰り返し構造で、分子量は様々です。

分子量数千のちいさなものは、皮膚に浸透しやすいという性質が注目され、また分子量100万以上のものは、皮膚に吸収はされにくいですが保水力の高さのために、それぞれ化粧品材料として活用されてきました。

ところが中間サイズの分子量10万付近のヒアルロン酸というのは、どっちつかずのため利用されてきませんでした。

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ところが、近年になって、この注目されてこなかった中間分子量のヒアルロン酸こそが、上皮細胞の分裂増殖にスイッチを入れる力があることが解りました(Hyaluronate fragments reverse skin atrophy by a CD44-dependent mechanism.PLoS Med. 2006 Dec; 3(12): e493.)。下の図で、吊り輪のようなものがCD44レセプターです。これが二つ、引き寄せられると上皮細胞に分裂増殖のシグナルが送られます。小さなヒアルロン酸分子は、二つ目のCD44に届きません。一方、大きすぎると、両方にくっついても、引き寄せる作用が起きないので、スイッチが入りません。中くらいサイズのヒアルロン酸だけが2つのレセプターに結合した後、これを互いに引き寄せることが出来ます。

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上皮細胞にシグナルが伝わると、分裂増殖が始まるとともに、新たなレセプターが細胞表面に現れて、なおかつ上皮細胞自身が、このヒアルロン酸の産生を始めることもわかっています。正のフィードバックがかかるわけです。いったん増殖のシグナルが送られると、一定期間、その効果が続くということです。

このサイズのヒアルロン酸は、実は胎児の皮膚形成に深くかかわっています。胎児の皮膚は妊娠16週ころに形成されるのですが、このとき胎児をとりまく羊水中に一過性に分子量10万付近のヒアルロン酸が増加します。これはどこから来たかというと、胎児自身が腎臓で作って、尿とともに羊水中に排泄していることも判っています。胎児は自分自身で皮膚の形成をうながしているわけです。うまく出来ていますね。

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このCD44レセプターは皮膚以外にも様々な上皮細胞に存在することがわかっています。膣粘膜にも存在します(The hyaluronate receptor is preferentially expressed on proliferating epithelial cells. J Cell Biol. 1989 Apr;108(4):1557-65.)。

皮膚において、中間分子量ヒアルロン酸は、老化やステロイドによる萎縮を回復させることが判っています(New therapeutic targets in dermatoporosis. J Nutr Health Aging. 2012 Apr;16(4):285-8.Inhibition of putative hyalurosome platform in keratinocytes as a mechanism for corticosteroid-induced epidermal atrophy. J Invest Dermatol. 2013 Apr;133(4):1017-26.)。ということは、加齢に伴う膣粘膜の萎縮にも有効なはずです。

現在、膣用の潤滑ゼリーとして売られている製品は、高分子ポリマー(カルボキシメチルセルロースなど)が主成分です。 ヒアルロン酸を含むものであってもその分子量は100万以上で含有量も少ないです。若い人の性交痛対策としては、これでも良いでしょうが、膣粘膜の萎縮を回復させる効果は期待できません。

これが、中高年の女性の膣ケアに中間分子量ヒアルロン酸をお勧めする理由です。

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ヒアルプロテクト30ml
3,240円(内税)
30ml
ヒアルプロテクト150ml
10,800円(内税)
150ml

☆現在、咲江レディスクリニックでは、中間分子量ヒアルロン酸の有効性の検証を行っています。

対象者は、閉経後6ヶ月以上たった方で、膣の乾燥症状(かゆみ、ひりひり感、性交痛)を訴える方です。女性ホルモン膣錠のみ処方した場合と、女性ホルモン膣錠に加えて中間分子量ヒアルロン酸も外用した方とで、効果を比較します。

研究にご参加いただいた方には、お礼として商品券5千円を進呈します。ただし、女性ホルモン膣錠の処方などに必要な通常の保険診療費用はご負担いただきます。

御協力頂ける方は、咲江レディスクリニックTEL052-757-0222までご連絡ください。